省エネ住宅 @Padova

イタリアの代表的な省エネ基準「CasaClima(カーザ・クリ-マ)」に則った新築住宅の見学。

日本では、平成25年省エネ基準により、300㎡以上の住宅を含む建物において、外皮平均熱貫流率と一次消費エネルギーを計算し基準をクリアしているという書類の届出義務という状況です。
イタリアでは、はるか24年前の1991年より「全ての新築の建物に対し外皮の最低熱貫流率等を指定し、確認申請時に省エネの書類を提出」させています。
現在に至るまで、かなり頻繁に法律も変わっています。
最近は、この10月にも大掛かりな変更があったようです。
いずれにしても、国の基準であります。

では、上記のCasaClimaとはなんぞや、となりますと、イタリア北部のボルツァーノという都市にて2002年に独自に発足した、建物のエネルギー性能を評価する、国とは独立した機関、ということになります。
違いはやはり、提出義務で終わらず、「適合」まで関わることでしょう。設計時のディテール、建物に掛かる影の調査、厳しい施工チェック、現場写真の送付、気密性テストを経て、適合か否かの判断が下されます。
このCasaClimaに適合する家を作るためには、建設費において約5~10%割高、証明書にかかる金額が約20万円。

今回見学する建物は、Aクラスで、年間エネルギー消費が22kwh/㎡年と計算され、従って延約200㎡あるこの家の暖房にかかる年間エネルギー消費量は、10kWhあたり灯油1リットルと換算され、22×200/10=440リットル、つまり灯油価格1.1ユーロをかけると、約500ユーロということになります。
イタリアでは、日本と違って冬季の暖房費がクリティカルに捉えられており、快適な温度で過ごそうとすると古い住宅だと700ユーロ/月かかる場合もあったりします。また、レンガ造の建物は、結露とも非常に無関係ではありません。
節約、健康、地球のことを考え、自主的にCasaClimaの基準に適合したいと思う人々が増えています。
それでなくても、ヨーロッパにおける次の、つまり2020年の目標は、ゼロ・エミッション=新築の建物からの二酸化炭素ゼロを目指していますから、私たち日本人の意識とかけ離れていることは事実です。

さて、本題。

省エネ住宅建築現場

私の勤めていた事務所はパドヴァ市の郊外にあり、物件もその近辺がほとんど。従って、新築が多いです。もしパドヴァの旧市街地区(チェントロ)だったら、改修がメインだったと思います。
今回訪ねる建築現場は、セルバッツァーノ・デントロという街で計画中のトリファミリアーレ(3戸長屋=テラスハウス)です。
この敷地全体は4分割され、4つのビファミリアーレ(二戸長屋)の予定でした。
vista 13 da alto

1テラスハウス(1/2)の値段が結局高くなり(40万ユーロ=5600万円)、不況の中、売れないということで3分割に、との要望のモト、ごり押しで設計しました。やはり真ん中が売れ残っているようです。
pedron_pianta
all_04
図面のように、外断熱の厚さは壁160(レンガ250厚の外側)、屋根240(松材羽目板の上)です。

現在、断熱材張りを終えようとしており、私たちの訪問までには断熱材留め付けが終わり、外壁塗装下塗りが始まろうとしていると思います。

この建物の外皮平均熱貫流率は、0.23W/(㎡K)。
ちなみに福井は0.87、北海道でも0.46というのが、改正省エネ基準です。